電柱工事とは
電柱工事について説明するよ!
電柱工事と言っても、電柱を建てる工事(建柱工事)、電柱を抜く工事(抜柱工事)、電柱の取り換え(電柱交換工事)など、様々な種類があります。このページでは、建柱工事の流れと、必要なものなどについて、わかりやすく画像入りで詳しく説明しています。
建柱車とは
電柱工事に特化した車両、それが建柱車だ!
電柱工事で活躍する主な機械としては、まず建柱車(けんちゅうしゃ)が挙げられます。建柱車とは、通常のクレーンに加えて、垂直孔を掘るためのアースオーガというドリルが付いている重機です。
頼れる粋なヤツ!
アースオーガを出すと、ブームの先端にアースオーガがくっついて伸縮し、アースオーガを格納すると、クレーンのブームだけが伸縮する、という面白い構造をしています。
ホクエイ電設では、主にアイチコーポレーション製の建柱車「ポールマスター」を使います。
ホクエイ電設では、4tベースの建柱車2台と3tベースの建柱車3台、計5台が稼働していて、そのうちの2台がモーメントリミッター付きです。
建柱車の詳しい仕様は以下から
アイチコーポレーション ポールマスター D70B1RS 及び D50B1FS
建柱工事の流れと手順
建柱工事に必要なものはたくさん!
建柱工事とは、電柱を建てる工事のことをいいます。基本的な流れ・手順としては、単純に穴を掘って建てるわけですが、付随する作業などを含めると膨大な準備などが必要となるため、電柱工事はやはり、電柱工事専門業者に任せたほうが良いことが分かります。
各種「許可証」の取得
いろいろな許可証があるんだね!
電柱工事をする前に、工事に必要な手続きというものがあります。
民地などの敷地内への建柱や、山林や道路など、電柱を建てる場所によって、その土地の所有者に建柱許可を取ることはもちろん、道路を使って工事する場合は、所轄の警察署で道路使用許可を取得する必要があります。
通行止めになる場合は通行止め許可証も合わせて必要になります。通行止め許可証は警察署だけでなく、町内会や自治会長の許諾が必要になる場合がほとんどです。
電柱を積んで走る場合は、通行する道路区分に応じた、国・都道府県・市から認可された特殊車両通行許可証の他に、警察署からは制限外積載許可証などが必要です。
また、撤去した電柱や、掘削したアスファルト舗装、および残土は産業廃棄物にあたるため、産業廃棄物収集運搬許可証が必要となり、電柱を処分する際は所定の認可を受けた処理場にて処分することが義務付けられています。
いずれの手続きも交付されるまでかなりの時間がかかるため、あらかじめ事前に手続きを済ませておく必要があります。
資格等の確認
作業に合わせた資格も必要だ!
電柱工事をするときは、ほとんどの場合、重機を使って行います。電柱工事では、主に「建柱車」「ダンプトラック」「ユニック車」などが活躍します。
これらのうち、建柱車のブームを動かして電柱の工事をするためには「小型移動式クレーン技能講習」と「車両系建設機械基礎工事用技能講習」または「穴掘建柱車運転のための特別教育」の資格が必要となります。
建柱車を現場まで運転するためには「中型運転免許」が必要です。建柱車は重量が7tほどあるので、準中型免許では乗れません。
また、建柱車を操作しない人でも、玉掛けや振動工具、切断といしなどの資格が必要になるのが電柱工事です。電柱に登るには「電気主任技術者」の資格が必要で、資格なく電柱に登ると電気事業法違反となります。
その他、電線の近くで作業する場合には電気の知識が必要となるため「第二種電気工事士」など、電気に関する資格もあったほうが望ましいでしょう。電線と電線の間に建柱する場合などは、当然必要となります。
電線の近くで作業する際の怖さはこちらをご覧ください ↓
・中部電力 電線の近くで作業される方へ
工事場所の事前確認
工事前の確認が大切だね!
許可証や資格等に問題がない場合、工事する前に工事場所を確認し、工事に関係する各所との連携を図っておきます。
電柱を建てる(建柱工事)場合、建てる場所に穴を掘るわけですが、そこに埋設物などがないかどうか、事前に照会しておく必要があります。
主な照会先は、下水道関連は所轄の市役所、ガスは所轄のガス会社、水道は所轄の水道局となります。その他にも、通信設備の地下ケーブルや県で管理する県水などの地下設備、空港が管理するパイプラインなどもあります。可能ならば、事前に立ち合いをお願いして試掘(試し掘り)を行い、埋設物の有無を確認しておくことが望ましいです。
道路の設備においては国・県・市・私道などがあり、それぞれ照会するところが違います。
また、電柱を道路に建てる場合、それぞれに許可された期間と埋め戻し方法が定められた「道路占用」というものが存在します。道路占用に沿った期間と工法を守って作業する必要があります。
電柱を建てる場合には埋設物だけでなく、上空の構造物にも注意しておく必要があります。電線類が近い場合は所轄の電力会社へ、通信ケーブルが近い場合は所轄の通信会社へ、公園の木の枝が当たる場合は市役所へそれぞれ照会し、所定の手続きを済ませ、場合によっては事前に設備の改修依頼をかけておきます。
このように、場所によって様々な違いがあることから、掘削する前の事前調査が大切になってくるのが建柱工事といえます。
工事前の段取り
段取り八分って言われるもんね!
関係各所との連携がとれたところで、ここでようやく、工事前の段取りを始めることができます。
工事前の段取りとして、作業計画書の作成、付近住民への事前通達(工事PR)から始まり、電柱や材料の確保、電柱を運ぶ経路、工事方法の選定(電柱の起こし方)、建柱時の危険個所、電柱が建った後の電線工事がいつ入るのか、などをあらかじめ想定し、準備しておきます。
アスファルト舗装の掘削
音がすごいのだ!
建柱場所がアスファルトの場合は、舗装カッターでアスファルトをカッター切りします。カッターで出た汚泥も産業廃棄物となるので、認可された所定の場所へ運んで処理します。
舗装が厚い場合には削岩機等を使い剝がしますが、これにも振動工具の資格が必要になります。
剥がした舗装ガラの処分も、産業廃棄物の運搬許可証を取得し運び、所定の認可を受けた処理場にて処分することが義務付けられています。
埋設物の事前試掘
埋設物を壊すと帰れなくなるよ!
まず、建柱車を使う前に、手掘りによる埋設物の確認「試掘(しくつ)」を行います。建柱車のアースオーガは最大トルク 6,470N・m~7,110N・m(1m離れたところでの回転力 660kg~725kg)と非常に強いので、埋設物があった場合にはコナゴナになります。
なので、1.5mほどの深さまでは、人力で慎重に埋設物の確認をしながら掘削していきます。
アースオーガによる掘削
でっけぇドリルは男のロマン!
無事、埋設物がないことが確認出来たら、いよいよ建柱車の出番です。4本ある「アウトリガー」をしっかりと張り出し、ブームに格納されているアースオーガを出します。
アースオーガも、電柱の太さや埋設物の状況などによって、太いものと細いものを使い分けます。ホクエイ電設では、直径800mm~250mmまで、各種、取り揃えてあります。
多くの場合、掘れる深さは5.2mほどですが、ホクエイ電設では10mくらい掘ることができます。
通常の電柱は元口径が400mmくらいのものが多いので、アースオーガも直径450mmくらいのものが一番多く使われます。
掘る深さは、電柱の全長の6分の1以上と電気設備技術基準で定められています。電柱が土の中に入る長さを「根入れ深さ」といいます。
電柱が12m柱なら根入れ2.0mで地上高10mとなり、電柱が15m柱なら根入れ2.5mで地上高12.5mになる、といった感じです。
電柱は下に行くほど太くなっているので、その分も計算してアースオーガを傾けたりしながら掘っていきます。例えば、境界ラインから20cm離して建柱する場合、アースオーガは17cm離して、1回目・2回目・3回目の角度をそれぞれ変えて掘る、といった具合です。
電柱の運搬
長い電柱を狭いところに運ぶぞ!
穴を掘るのと同時に、あらかじめ電柱を運んでおきます。ホクエイ電設では、電柱運搬車として、3tユニック車×3台が稼働しています。
穴を掘る前に運び込んだり、掘った後に運び込んだり、状況に応じて対応します。
現場までの道路状況に応じて、右に積むか左に積むか、前に積むか後ろに積むかなど、事前に考えて積まないと入れない場合も。
ホクエイ電設では、16mまでの長尺物の運搬許可を取得しています。
電柱の吊り上げ
大きくて太くて硬いのだ!
電柱ならではの玉掛け方法というものがあります。周囲の障害物の有無によって、電柱の重心位置からワイヤーまでの位置を調節します。
ガス管などの埋設物の近くに穴を掘った場合、真っすぐに穴に入れないと、電柱が埋設管の上に乗っかって埋設管を壊してしまうので、垂直になるように、通常よりも少し上のほうを吊ります。
また、地際で吊る時は正面を向いていた電柱ですが、穴に差し込むときはブームの旋回に合わせて、約55度回ることになるので、そこも逆算して玉掛け位置を決定します。
電話線などの通信ケーブルがある、割り込み建柱の場合、電柱の耳(足場ボルトを付ける部分)やウインチのフックが引っかかるので、玉掛け位置は特に注意して選定します。
電柱の建て起こし
そそり立つ電柱!
無事に穴が掘れたら、アースオーガを格納して、電柱を吊り上げます。電柱の種類により重さは様々ですが、だいたい1トン~2トン前後の重さがあります。
建柱車はバックホウなどと違って、気を付ける部分がめちゃくちゃ多いのが特徴です。
ブームを伸ばすと、吊り荷である電柱も一緒に動きますが、電柱は長いので、後ろを振り返って電柱の頭頂部がブロック塀や車に当たらないように、振れないよう調整しながら吊り上げていきます。
電柱が吊り上がってくると、電柱の元口(もとくち:根元側のこと)が滑ってくるので、その場で動かないように適時旋回しながら吊り上げていきます。
旋回すると近づいたり遠ざかったりもするので、今度はそれを相殺するために伸縮動作を行います。ブームが10cm伸びると、電柱の先端部では20cm以上動くので、計算して慎重に動かします。
建柱車はこのように、一つの動作だけで動かすと、違うどこかも連動して動いてしまい、何かを壊す原因になるので、吊り上げながら旋回し、伸縮しつつ起伏するという、最低でも4か所を同時に見ながら、3~4つのレバーを同時に動かす必要があるものです。
電柱の位置決め
時には数mm単位で調整するぞ!
電柱を穴に差し込んだら、根入れ深さと位置、垂直を微調整します。電柱には、根入れ線というものが印刷されていて、黒線と白線の間まで埋めることで、既定の根入れ深さが確保されることになります。
また、電線の状態によって、引っ張られる反対側にあらかじめ少しだけ傾斜させて建柱します。真っすぐに建てた場合、数年~数十年経つと、電線に引っ張られて傾いてしまうからです。
特に仮柱の場合は、元位置建替時の電線状況を先読みし、かなり傾斜させて建てておく場合が多いです。
根枷取り付け
根枷(ねかせ)と読もう!
電柱の位置が決まったら、動かないようにある程度まで埋めます。その後、地際付近に根枷を取り付けます。根枷を取り付ける目的は、主に電柱の沈下防止と傾斜防止です。
大きく分けて、根枷にはコンクリート製と樹脂製(プラスチック製)の2種類があり、ほとんどの場合はコンクリート製の根枷を使います。
コンクリート製根枷と樹脂製根枷の違い
- 樹脂製に比べて価格が安い
コンクリート製根枷の良いところは、樹脂製に比べて安いことです。近年では、リサイクル樹脂製の根枷が登場しましたが、流通量とコストの関係で、まだまだコンクリート製が主流です。
- 樹脂製に比べて、すごく重い
昔は100kgだったコンクリート根枷ですが、最近は骨材に軽い石が多く含まれた軽量な根枷が多く使われています。軽量とはいえコンクリートなので70kgほどありますが、樹脂製の根枷は28kgと半分以下の重さです。人力でしか行けない急斜面などで主に使われます。
根枷の大きさ
根枷の大きさも、電柱の大きさに合わせた種類があります。主に使われるのは長さ1.2m、重さ70kgのコンクリート根枷です。小さい電柱に使われるものとしては、長さ0.7mで重さは15kgです。
根枷取り付け基準
地域によって違いますが、根枷には取り付ける設置基準というものがあります。
根枷の方向
支線の代わりに入れる場合は、張力のかかる側に設置しますが、支線のほうがより強い荷重に耐えられます。
通常は電線路と平行に設置して、電柱および電線に横から当たる風圧の曲げモーメント対策として入れる場合が多いです。この場合も、支線のほうがより大きな荷重に耐えられます。
なお、埋設物や道路状況などで取り付けられないこともあります。入る場合でも、道路と平行に入れることが多いです。
アンテナ柱などの独立柱ではX字に入れる場合もあります。基本的に、境界をまたいで設置するようなことはしません。
根枷の深さ
道路などでは、根枷の上端が地際より30cm以上の深さになるように取り付けします。畑などの耕作地では、トラクターの刃が当たらないように、50cm以上の深さに取り付けます。
また、深ければ良いというわけではないので、地盤の状況を鑑みて取り付け位置を選定します。
根枷バンド
取り付けには専用の「根枷バンド」という、U字型のボルトを使う場合が多いです。これも、電柱の大きさに合わせてたくさんの種類があります。
最も多く使われるのが、12m柱(12-19-350 と 12-19-500)には 32cmのUボルト、14m柱(14-19-500 と 14-19-700)には 36cmのUボルト、となります。
コンクリート根固め
プロレスの技じゃないのだ!
強度の高いアンテナ柱などの単独柱で、根枷だけでは強度不足となる場合に、状況に応じ電柱の周りをコンクリートで固める「根固め」工事が行われます。
埋め戻し
意外と性格が出るのがこの作業だ!
根枷や接地工事が終わったら、地際まで埋め戻します。ホクエイ電設では、陥没防止のため通常は生コン用のバイブレーターを使い、川砂を水で締めながら埋め戻します。畑などは作物の生育に影響が出ないよう、掘った土で埋め戻します。
道路の場合は道路占用により、場所ごとの埋め戻し方が決められているので、それに沿った埋め戻しが必要になります。
U字溝の中に電柱を建てた場合、水が流れるように仮のパイプを入れて埋め戻す工法もあります。
仮舗装
ここまでだいたい1時間!
舗装では常温アスファルト合材を使い、仮復旧します。本復旧は、専門の舗装屋さんが天気などを確認して日程を調整し、熱いアスファルト合材を持ってきて、後日行います。
仮復旧は、本復旧までの間、段差をなくしたり、土が流れないようにするための仮処置です。
道路清掃・片付け
工事前よりも綺麗になってる!
作業が終わったら、後片付けをして道路を掃除して撤収します。道路清掃は、ほうきと高圧洗浄機を使います。高圧洗浄機は車のタイヤの3~4倍くらいの圧力で水を噴出させるので、通行人などにも十分注意して洗浄します。
積み下ろしと図面落成
家で泡の出る液体を飲むのだ!
会社に帰った後、消耗した材料を補充したり、汚れたものを洗ったりします。同時に、図面の落成処理も行います。分担を決め、みんなで手分けすることで、素早く行うことができます。
無事に自宅に戻るまでが仕事です。安全運転で帰りましょう!
いろいろな用途の電柱がありますが、建柱工事の流れは、だいたいこのような感じです。
場所によって様々ですが、建柱工事にかかる時間というのは、一般的に1本あたり1時間程度です。しかし、事前の試掘や地先PRなどの準備、工事後の残土処理や落成処理などを合わせると、作業は膨大なものとなり、むしろ、そちらのほうが時間がかかる作業と言えるでしょう。ホクエイ電設では、チームで動き、仲良く手分けすることで、年間1,000本を超える電柱工事を可能にしています。
電柱工事に関することなら、何でもお気軽にお問合せください!